マンションの理事長になったら、どんな仕事をそのように考えていくべきなのか。誰もが初めて知るであろうマンション管理業界。その一般的ではない考え方や運営方法を疑問に思うことも多いはず。
そこで、このシリーズでは理事長や役員になったら知っておくべきやりべき仕事とその裏側についてご紹介します。
今回は、南海トラフ地震への対策が急がれる中、特にマンション内はどのように揺れが伝わり、どのような被害が発生するのかを東日本大震災及び熊本地震を例にしてご紹介したいと思います。なお、実際に確認している事例にタワーマンションや免震装置付きマンションがありませんので、今回の話はごく普通のコンクリート造りの建物である事が前提です。
マンション倒壊はあり得るのか!?
マンションの建築時期により耐震基準が異なる事は有名な話ですが、具体的には昭和56年(1981年)に現在の基準になっているため、新耐震基準以前のマンションは倒壊について真剣に検討する必要があるでしょう。
大地震の場合、旧耐震基準であり、かつ、1階が*1ピロティのマンションは柱に大きな損傷が生じて倒壊はしていないが住む事ができなったという事例はあります。
また、熊本地震のように大きな地震が繰り返し発生した場合、現在の新耐震基準のマンションでも「度重なる揺れ」を想定しているわけではないので、被害の拡大は十分考えられます。
住んでいる部屋ごとに被害状況が異なる!!
お皿のうえに豆腐を乗せて揺らしてみると分かりやすいですが、マンションの下の方(低層階)はあまり揺れず、上の方(上層階)は揺れが大きい事はイメージしやすいと思います。 しかし、実際は、「揺れが大きい=被害が大きい」という事ではありません。
低層階も当然に大きな揺れが発生しますが、建物の骨格部分(躯体部分)が頑張ってマンション全体を支えるため、部屋内の壁、特にお隣との境になっている壁に大きな力がかかり、クロスに大きなクラックが入り、部屋内の仕切り壁に隙間や破損が多く出てきます。
上層階は、揺れが大きく物が落ちる被害が多く発生しますが、壁自体には大きな力がかからないので(揺れる事で力が逃げる)、物の落下を防ぐ措置を取っておけば案外被害は少ないです。
中層階はというと・・・ちょうどマンションの真ん中の階くらいから被害状況がコロッと変わっている例が多くあります。つまり、15階建てだったら、境目は7階と8階で被害状況が変わるとう具合です。しかし、これはマンションの形状や揺れの方向により異なりますので、ちょうど真ん中の階層の方はどちらに転ぶか分からないという事です。
部屋以外の被害は??
共用部分の被害ですが、特にバルコニーの被害において上述したように低層階と上層階で力のかかり方が違うため、バルコニーの床に亀裂が入り、亀裂から水が浸入し白い液が染み出てきて洗濯物が干せなくなるという被害が出てきます。白い液はコンクリートに含まれるカルシウム成分であり、耐震上問題となる現象ではないのですが、バルコニー床面に貼られたシートに被害がなくても下地に亀裂が入っている事で被害が発生するため、地震後に発覚する隠れた被害といえるでしょう。地震発生後はバルコニーの天井を見て亀裂が入っていないか確認してみて下さい。
<コラムセレクション>
*1:1階部分が駐車場になっており、柱以外の構造物がない、または、極端に少ない構造