マンションの理事長になったら、どんな仕事をそのように考えていくべきなのか。誰もが初めて知るであろうマンション管理業界。その一般的ではない考え方や運営方法を疑問に思うことも多いはず。
そこで、このシリーズでは理事長や役員になったら知っておくべきやりべき仕事とその裏側についてご紹介します。
今回は、管理組合全体で考えるべき対策についてご紹介したいと思います。なお、実際に確認している事例にタワーマンションや免震装置付きマンションがありませんので、今回の話はごく普通のコンクリート造りの建物である事が前提です。
家具固定は当たり前
前回の記事で階層別の被害状況をご紹介していますが、上層階程揺れが大きいため、家具の固定は必ず実施しておきましょう。
家具が倒壊しガラス片が飛び散り、外に避難できないという状況は多くの方が体験しています。地震が頻発している状況で同じミスをするのは自業自得としかいいようがありません。
ただし、クロスのすぐ下に共用部分であるコンクリートがあり、釘やビスが使えないマンションもあります。コンクリートに穴を空けてしまったら、そこから被害が拡大してしまう可能性がありますので、しっかりと事前確認を行ってください。
ちなみに、つっかえ棒でもある程度の被害軽減はできたという報告も多くあります。
水道栓(元栓)の場所を事前に確認
大地震の直後は停電する可能性が高く、多くのマンションはポンプで給水しているため、停電した場合は断水します。
地震発生後はしばらく余震が続くため、すぐに部屋内を掃除しても同じ事の繰り返しになり、停電等でエレベーターも使えず通常の生活ができないため、多くの方が避難所での生活を余儀なくされます。
この時に問題が発生します。
避難時、部屋内の水道は停電により断水していますが、避難所にいる時(部屋に誰もいない時)に復電し、かつ、部屋内の給水管が破損していた場合、部屋内で漏水が発生し下階へも迷惑をかけてしまう事になります。給水管は、蛇口をひねった時に水が出るように常に圧がかかっているため、破損した給水管では破損個所から水が常に流れ出てしまう事になります。
よって、避難所に行く場合や部屋を開ける場合は、水道を元栓から閉める必要があります。また、夜間の場合、明かりがない事もありますので、手探りで場所が分かるように事前確認しておきましょう。多くの場合、水道の元栓は外廊下の玄関扉横の金属製の扉の中に設置してあります。
水道の蛇口は全て閉める
復電し水が供給された時、蛇口が開いていると当然水が出ます。 多少の水道料金がかかる程度ならばいいのですが、水道管本管から流れ入った泥水が共用給水管に侵入し、蛇口が開いている部屋に集中し流入していしまい、蛇口そのものが壊れしまうという現象が起きてしまいます。元栓を締めておけば問題ないのですが、元栓を締める事ができない場合は、蛇口だけでも閉めるようにしましょう。
電気のブレーカーの場所を事前に確認
地震発生時に家電が動きコンセントが微妙に抜けかけていた場合等、その間にホコリや水が入り、復電後に発火し火災になるケースも報告されています。
電気ブレーカーは部屋内にある事がほとんどですので、しっかりと場所を確認し、避難する際にはブレーカーの元栓を落としてから外出するようにしましょう。
食糧確保
東日本大震災と熊本地震、 どちらの地震も過酷な環境ながら餓死するような事はありませんでした。
しかし、食料や水の確保に時間がかかり、生活復旧の時間が取れないという事はおおいにあります。
つまり食糧確保の重要性は、「食べるものに困らない事による精神的な安定」にあると考えましょう。
特に貯水槽を採用しているマンションでは、水道管本管の破損により泥水が流れ込み、復旧する際には貯水槽清掃が必要となってくるため、市や県から給水管復旧の通知が出ても部屋の水道を飲み水として使用できるまでには余計に時間がかかりますので水は多めに確保しておきましょう。
ちなみに、地震発生後に好まれる食べ物は果実や野菜等の生物です。どうしてもレトルト製品ばかりの食事となってしまいますので、体が欲する食糧が偏ってしまうのです。
ガスの元栓
ガスは揺れを感知して自動で閉栓しますので、インフラの中では最も安全です。
しかし、復旧の際には入居者の立ち合いが必要となるため、多少の手間と時間がかかります。 復旧可能時にはポストや玄関先、ガス検診装置付近に案内が付いています。
機械式駐車場
機械式駐車場はまず動きません。復旧しても余震によりすぐに停止します。
ただし、一階部分に駐車しているのであれば、安全フェンスを上げるなどして利用できる可能性は高いです。
しかし、1階以外の方は機械式駐車場をご利用の方は車の利用は諦め、他の移動手段を確保しておき、車の中に避難グッズを置いておかないようにしましょう。
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