マンションの理事長になったら、どんな仕事をそのように考えていくべきなのか。誰もが初めて知るであろうマンション管理業界。その一般的ではない考え方や運営方法を疑問に思うことも多いはず。
そこで、このシリーズでは理事長や役員になったら知っておくべきやりべき仕事とその裏側についてご紹介します。今回は、そもそも何故マンション管理会社は杜撰な管理をしまうのかという事にスポットをあてます。
管理会社の歴史
戦後の住宅不足から集合住宅の建築ラッシュが始まり、1956年に部屋内を区分所有するといういわゆる一般的な分譲マンションが初めて建設されました。
その後、1962年に分譲マンションに関する法律の一つである「区分所有法」が制定され、マンションの急増に伴い「マンション管理」が認知されまじめ、マンション管理会社に関する法律である「適正化法」が2000年に制定されました。
つまり、2000年までは法的な縛りはなかったため、マンション管理会社はいえば「好きなように」運営されてきたという歴史があります。
管理会社の誕生
分譲マンションが世に出てからマンション管理会社が法的に整備されるまで長い時間がかかっていますが、そもそもマンション管理会社の原点は「ビル管理業」や「建設会社の管理部門」である事がほとんどです。
当時の「ビル管理業界」や「建築業界」は劣悪な環境である事が多かった事もあり、どんぶり勘定的な事が多々ある業界でした。今でこそキチンとしている印象ですが、最近の大手建設会社の不祥事でも分かる通り、法律順守も大切ですが、やはり現場主義を優先せざるを得ない業界から発展してきたという事がわかります。
管理会社物件担当者の資質
マンション管理業界は別名「クレーム産業」ともいわれ、現場担当者には強靭な精神力が求められます。教職員の鬱病が話題になっていますが、マンション管理業界も多くの担当者が休職に追い込まれています。
この強靭な精神力とは裏を返せば色々な事に無頓着である必要があるとも言えます。
よって、そもそもマンション管理業界で生き残れる者は、往々にして無頓着であり、キチンとした仕事を苦手とする部類の人間が多くいます。
私の経験上、血液型はB型とO型が多いです。
有能な担当者の資質
マンション管理業界の有能な担当者とは、トラブル解決能力に長けています。
入居者の立場としては、管理組合運営が上手くできる、マンション管理のプロとして適切なアドバイスができる、工事内容の詳細な確認ができる、そもそもトラブルにならないように事を運ぶといった能力を求めているのは理解できますが、そもそもがクレーム産業であり強靭な精神力が求められる(裏を返せば無頓着)ため、時にはズルをしてでもトラブルを解決できる能力が最も重要となってきます。
つまり、業界的に求められる能力と入居者が求める能力の優先順位に違いがあるため、繊細さや公平性が求められる職業の方からすれば「杜撰」に映り、逆に管理会社担当者から見れば、そのような職業の方は「細か過ぎる」悪く言えば「融通が利かない」ため、息苦しく感じる事が多いのです。
担当者の葛藤
マンション管理会社のお客様とは誰でしょうか??
①当然に管理組合の皆様
②デベロッパー系管理会社の場合は、マンション建設会社
上記の2パターンがあります。
入居者の方からすれば、①のみを考えてしまいがちですが、マンション建設時から同じ管理会社の場合は、安定してマンション供給をしてくれる②もとても大切なお客様になります。
現場の担当者として管理組合を向いて仕事がしたいと考えていますが、会社としては②にも気を配る必要があるため、よく言う「管理組合の立場になって」物事を考えるのが難しい場合が多々あります。
では、独立系管理会社であれば解決するかといえば、それはそれで担当数が増え「管理組合の立場になって」物事を考える時間的余裕がないというのが現実です。
最後に
読んでいただいた方はご理解いただけたと思いますが、マンション管理会社とは実に中途半端なもので、驚く程しっかりした業界ではありません。
しかし、住宅供給過剰で建設業界も先細りする中、管理委託料が毎月安定して入ってくるマンション管理業界は「ストック産業」といわれ注目されています。
また、対応の難しい人間の感情トラブルの解決等、他の産業と比べるとAIでの処理が難しいともいわれており、精神的にはとてもキツイ仕事ですが、人間の入れ替わりは多くとも業界としてはまだまだ可能性があります。
もっと世間に認知され、管理会社の立場が強くなり、鬱病罹患者が少しでも減るよう願っています。
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